02+1
「あまり長居をしていると、風邪をひくが?・・・」
 いささか気遣ったようなメフィストの云い方であった。

 せつらは横目使いでメフィストを睨むと、ぶるんと子犬のように頭を振る。
 せつらの髪や肩に降り積もった雪が滑り落ちていき街の光が反射して、きらきらと夢のように地面に舞った。
 一瞬、それに見惚れたせつらの気がゆるむ。
 すると、せつらの視線を遮る白い物があった。
 メフィストの繊手だ。
 せつらの髪に残ったわずかな雪の一片を繊指で除けているのだ。
 せつらは憮然とふてくされたように白い医師の行為を視ていた。
だが払いのけようとする様子もない。
 だが次のメフィストの言葉には、心底呆れ返ったようだった。
 まさか、この医師からこんな言葉を聞こうとは。


「MERRY CHRISTMAS・・・・・」


 メフィストはせつらの髪に触れながら、確かにそう言ったのだ。
 せつらは眼を細めて、じとっとメフィストを凝視めた。
 白い医師は口元に笑みを刻んだ。
「お気に召さないか」
「似合わなすぎるよ、メフィスト。おまえからそんな言葉が聞けるなんて、天界の大天使もびっくりぎょうてんだな」
 軽く溜息を肩でつきながら、それでもこの若者の気を紛らわせるには役に立ったようだ。
 雰囲気も和らいだものに変わっている。
 

 髪からメフィストの指を遠ざけるように身を離すと、区役所通りの方角に身体を向けた。
 もう自分が命を絶った相手のことなどに、何の想いも残っていないかのように・・・・・・。
 どんな出来事もこの若者の精神(こころ)には留まっていないのだった。

 せつらが顔だけをメフィストに向けて、
「世間はクリスマスで浮かれていようが、こっちは仕事に身を入れるに限るよ。おまえも、さっさと戻ったら?」
 そして、ホントは忙しいんじゃないの?、と付け足した。
 すっかりいつもの、この若者だった。
 白い医師はそんなせつらの様子を視ていたが、もう一度口元に笑みを掠めさせると、そのとおりだと同意した。
 その医師がこんな場所に訪れた理由など、その若者には決して解るまい。
 そしてまた、その医師もそれでいいのだと承知しているかのようだった。

 やがて黒白の影は寄り添うでもなく、かといってそっけなく離れるでもなく、夜の街の一番明るい方向へと共に歩んで行ったのだった。
 次の新たなるドラマを見届けるために―――――――・・・・・。

                                Fin







                          ◆後記◆
 この話はいつごろ書いたものか憶えてはいないのですが(2000年以前なのは確かですけど,その3年くらい前辺りかも・・・)、冬コミに受かったのでそのペーパー用に記念に書いたものです。それにいささかの加筆・修正を加え、内容的にはほとんど変わりなくHPに載せさせていただきました。

 それで今回改めて読み返してみたのですが、この小説のシリーズとキャラにまるで似合わないくらい、ほのぼのとしてますね。あるまじき事です。(夢見すぎ・・・爆★)

 この小説FCのジャンルをやっていた時は、他にもペーパー用にイラストを描いたり漫画を描いたり、無料配布で他の絵描きさんの協力も得、同人誌をくばったりとかしていました。とにかく結構一生懸命にやっていたと思います。
(今やれといわれても、流石にちょっとできない・・・★)
 それだけやっぱり、想い入れがあったパロだったのだと思います。          
 
 最初に読んだ菊地秀行 先生の作品はあんまり憶えてはいないのですが、【マンハッタン聖魔伝】あたりかなあ・・・。
 そのときはあんまりピンとこなかったのでそれっきりだったのですが、それから10年以上経ってからたまたま読んだ【双貌鬼】にガツンとやられてしまったのでした。
 それから後は、もう一直線にハマってしまいましたね。(^.^)

 菊地作品に出逢えたことはまさしく私にとって僥倖ともいうべきことで、その中でも“秋せつら”という存在に出逢えたことは本当に奇跡と言っても過言ではありませんでした。
 またもともと好きな実在の人物である“沖田総司”とも微妙にダブる面もあり、かといって一筋縄ではいかないそのキャラ像にはいまでもぞっこんです。(^.^)
 もちろんコンビ(?)ともいえるドクター・メフィストの存在も大変大きいですね。(笑)

 “秋せつら”については、いつだったか『活字倶楽部』で【新選組】特集をやっていた時、私は“沖田総司”に投票したのですが、そのハガキの裏に書いたコメントがそのままにあてはまると思います。
 
 私にとっての“●●●●”は、終わらない青春であり、見果てぬ夢であり、光であり、輝きであり、そういったものを含めたすべてであったのです。

 でも結構、せつらって捉えどころがないんですよね。ある意味、ドクターよりも訳判らない時がありますが、やはりそこが〈新宿〉の象徴ともいえる所以なのでしょうか。
 最近ちょっと御無沙汰しているようですが、またの活躍を期待したいと思います。
 私としては彼が出てくれるだけでいいので・・・。


 
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